勢いを増すパレスチナ音楽

BBCでも取り上げられるようになったパレスチナ音楽シーン。PMXはじめ、パレスチナの音楽フェス、イベントはきっと”パレスチナ”という単語からは想像がつかないくらい盛り上がっている。パレスチナの音楽産業はまさに進化の真っ最中と言えるだろう。

Spotifyのアラブ地区進出もその後押しの1つだ。

http://www.bbc.com/culture/story/20190917-the-rise-of-palestinian-pop?fbclid=IwAR2isuD5JgPAOh843QLA87XVksKK0bn1V_JwlIvQFQWzUbKnpSavvbMWWnY

BBCには何組かのパレスチナミュージシャンの紹介がある。

Bashar Murad

彼は占領下にある東エルサレム出身、パレスチナ人としての生きてきたバックグラウンドから、アラブ社会におけるジェンダーイコールやLGBTの権利など歌の中にはパレスチナ問題、社会問題のメッセージが込められている。4月のPMX、5月のグローバルビジョンを経てアイスランドのHatariとのコラボレーションと目を見張る。伝統とポップさのバランスも良くYouTubeで公開しているMVのセンスも抜群!パレスチナで見たことのないステージアクトを心がけるなどエンターテイナーとしての意識も高い。抜群の歌唱力は言うまでもない。

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Bashar Murad at PMX2019 撮影:菅 梓

TootArd

彼ら3人はロックバンドでゴラン高原、マジダルシャムス村の出身だ。この村はドゥルーズ派の人たちが住んでおり元々シリア領だった。今はイスラエル占領下となっているが住民たちはイスラエル人になることを拒否しておりパスポートを持たない、そう国籍がない。まさに音楽がレセパセ(通行証)となり海外へ。海外からのオファーは昨年のPMXが1つのきっかけであり、PMXはshowcaseとしての役割を果たした。中東ミュージシャンにとってはセンセーショナルなまさに事件、イギリスのグラストンベリー・フェスティバルに出演をしたのだ。

TootArd at PMX2019 撮影:菅 梓

El Container

6人組の東エルサレム出身のバンド。エルサレムに生まれるというのは時に複雑な環境をもたらす。東エルサレムはパスポートを持つ人、持たない人がいる。持たない人の多くはヨルダンパスポートを所持していたりもする。イスラエルは東エルサレム住人にイスラエルパスポートを取得するように促しているが、これには賛否がある。イスラエルパスポートを取得することで東エルサレムにはパレスチナ人はいなかったものとするのではないか?ということ。イスラエルパスポートがあればベングリオン空港の利用可能といった様々な恩恵があるのだ。もちろんクネセト(イスラエルの国会)の選挙権も得られる。
El Containerはエルサレムの居住権はあるがイスラエルパスポートを所持しない。TootArdと同じように出国するためにはレセパセを取得し、訪問国のビザも必要となる。国籍がないとビザを取得するのは厳しい。そしてそれには多額の費用と時間がかかりまた、エルサレムに戻れる保証もない。許可証があったところでチェックポイントは気まぐれだったりもする。海外ツアーをするのもままならないのは想像に難くない。

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El Container at PMX2019 撮影:菅 梓

DAM

パレスチナ初のラップグループでパレスチナでも最も有名なバンドの1つだ。政治的なメッセージ性が強く人気がある。バンド結成の1999年。その後の活躍は言うまでもなく、映画での来日も実現している。彼らの人気の要素はリアリティーだと思われる。アラビア語でのラップ、現実世界のフラストレーション。
”現実”人々は同じ気持ちを持って生きていた証がこの人気であろう。PMXでもトリを飾った。それは2019年5月のイスラエルのクネセトの選挙直前であった。会場には選挙をボイコットしろというプラカードを持った人もいた。しかし、中心メンバーのTamerは選挙に行くように!というメッセージの曲をYouTubeにアップした。

DAM

Apo and the Apostles

エルサレムのアルメニア人地区のApoと西岸地区に住むFiras,Amir,Pieer,Victorの4人、計5人からなるロックバンド。パーティロックの音楽はパレスチナのどの音楽フェスも盛り上げる。
エルサレムと”分離壁”の向こう側、空の色も気温も変わらない。そこに隔たるチェックポイント。全員が集まるには西岸で、となるのが効率的だろう。しかし西岸に住む4人が全員近所に住んでいるわけではない。ラマッラとベツレヘムはエルサレムを経由すればかなり近いが分離壁を迂回しないと車での移動ができないので少なくとも3時間はかかる。西岸メンバーが”チェックポイント”を超える許可を得てテルアビブでライブをしたことがあった。エルサレムからApoが移動車に乗り込みベツレヘムのチェックポイント前で待つ、そこからラマッラ近くのチェックポイントに向かい他のメンバーが乗り込む、そしてそこからテルアビブに向かう、というものだった。

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Apo and the Apostles at Shepherds Beer Fest 撮影:菅 梓

Sol Band

ガザはまた状況が異なる。周囲を壁で囲われ海も空も出口がない。経済封鎖、人の移動の封鎖。そんな中で音楽活動をするのは想像をはるかに超えて難しいはずだ。エルサレムどころか西岸地区に行くことままならない。2019年今年のPMX奇跡的にSol Bandの招待が叶った。イベント側は毎年トライをしているが、同じ国とはいえ、ガザからラマッラーへの道のりは果てしなく遠い。チェックポイント、分離壁。バンドのボーカルHamadaは今回ガザのミュージシャンで初めてラマッラでアクトした喜びを語っていた。ラマッラだけでなく、エルサレムのオーストリアホスピスでも公演する快挙を成し遂げた。しかし、これが快挙であること自体、占領の惨さだ。

Sol Band at PMX2019 撮影:菅 梓

PMXの果たす役割

自らをパレスチナ音楽のショーケースと称す音楽フェスPMXはパレスチナ音楽のジャンクションと言える。アーティストは海外から音楽イベントのプロモーターやライターが招かれパレスチナミュージシャンたちのパフォーマンスを鑑賞する。会場にはもちろんローカルのお客さんもいる。
占領で虐げられ何も出来いと涙し嘆きわたし達は犠牲者です!なんて言ってられない。
犠牲者はむしろ、あなたたち、世界中の人たち!だってこんなに才能ある数多くのパレスチナミュージシャンを知らないなんて。そんな心意気で開催されるPMXの主催の1人Ramiはこう語った。
このイベントの目標は健全な音楽産業を作ることそのためにも世界にパレスチナミュージシャンを繋げること。

 PMX2019会場 撮影:菅 梓

パレスチナミュージシャンの海外公演の難しさ

西岸地区に住むパレスチナ人は原則ベングリオン空港は使えない。かつてあったエルサレム、ガザの空港は閉鎖している。彼らはわざわざヨルダンに出向きアンマンの空港から海外へ向かう。国境はイスラエルが管理しているため、シャバット(安息日)にかかってしまえば国境はクローズし1日待たなければならない。ヨルダンまでのその費用、片道500米ドル。また分離壁を超える許可が本当に得られるのかどうか、許可証が得られるのにどれくらい時間がかかるのかそれすら不明瞭なのだ。海外からオファーがあってもおいそれとはなかなか応じられないのも現実だろう。

エルサレムとラマッラを隔てる分離壁、カランディアチェックポイント 撮影:菅 梓

インターネットがある今という優位性

インターネットには分離壁もチェックポイントもない。現代のアーティストたちは楽曲をSpotifyやYouTubeなので披露できる。”パレスチナ音楽”は今まさに世界に進出し始めたところだ。

政治的問題とかけ離れても音楽性に注目を!

”パレスチナ”とつくだけでどうしても政治と組み合わせて考えてしまう。本コラムも音楽性よりも政治的な視点、問題点の記載が多い。歌詞のメッセージ性、パッション、バックグラウンドが濃いだけに政治的問題とは切っても切り離せない。しかし、彼らの音楽性、エンターテインメント性を知っているだけに政治の話だけで終わらせたくない。YouTube,iTunes,Spotify,TikTok、あらゆるところでパレスチナ音楽には容易にアクセスできるようになりぐっと身近になったがそれに気がついているかいないかだけ。
パレスチナ音楽、門戸は開かれた。新しい中東音楽の世界へ我々はいざ行かん。

PAMfest2019
PAM fest 2019 撮影:菅 梓
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